採用業務の工数を数字にする|人事の工数不足を可視化する棚卸しガイド

この記事は、採用業務が忙しいという実感はあるものの、それを社内に説明するすべを持っていない方に向けた内容です。 この記事では、人事の業務を人事業務の10ドメインに分け、そのうち Recruiting を採用ファネル8段階に分解します。あわせて、タスク別の工数目安、自社の月間工数を算出する記入式テーブル、人件費換算の考え方、削る・型化する・自動化する・外に出すの4分類による仕分け方を扱います。 本記事に登場する工数の数値は、あくまで参考値…

コラム・ナレッジ

この記事は、採用業務が忙しいという実感はあるものの、それを社内に説明するすべを持っていない方に向けた内容です。
この記事では、人事の業務を人事業務の10ドメインに分け、そのうち Recruiting を採用ファネル8段階に分解します。あわせて、タスク別の工数目安、自社の月間工数を算出する記入式テーブル、人件費換算の考え方、削る・型化する・自動化する・外に出すの4分類による仕分け方を扱います。

本記事に登場する工数の数値は、あくまで参考値です。自社の値で当てはめていただければ幸いです

人事の業務は「人事業務の10ドメイン」に分かれる

人事業務の10ドメインとは、人事の業務を〈Strategy/System/Development/Wellness/Operation/Compliance/Culture/Partner/Recruiting/Outflow〉の10の領域に分けて捉えることができます。
本記事が扱うのは、このうち Recruiting(新卒採用・中途採用・採用広報・採用体制)です。

「人事が忙しい」という状態を数字にできない理由の1つは、業務の範囲が広く、何を数えるべきかが定まらないことが一つの要因です。まず領域を分け、そのうち1つに絞ってから工数を測ります。

以下は、人事業務の10ドメインの一覧です。

ドメイン 主な業務
Strategy 人員計画、要員配置の方針、人事戦略の策定
System 等級・評価・報酬の制度設計と運用
Development 研修、育成計画、キャリア開発
Wellness 健康管理、労働時間の管理、職場環境の整備
Operation 勤怠、給与計算、社会保険の手続き
Compliance 労務管理、規程の整備、法令対応
Culture 理念浸透、社内コミュニケーション、エンゲージメント
Partner 現場部門との連携、人事施策の実行支援
Recruiting 新卒採用、中途採用、採用広報、採用体制の整備
Outflow 退職対応、アルムナイ、離職分析

IMG-03-1 人事業務の10ドメイン

この記事で測るのは Recruiting だけです。他のドメインの工数を同じテーブルに混ぜると、どの業務が許容量を超えているかが分からなくなります。

内部リンク:採用が構造的に難しくなっている背景は、採用ができない本当の理由(2026年市場データ)で扱っています。


採用業務を「採用ファネル8段階」に分解する

当社のメソッドでは、採用を〈段階0 採用ブランディング・戦略設計/段階1 認知・興味/段階2 母集団形成/段階3 見極め(選考)/段階4 アトラクト・グリップ/段階5 オファー/段階6 辞退阻止/段階7 オンボーディング接続〉の8つの段階に分けて捉えます。今回は工数はこの8段階の単位で測ってみます。

採用業務の工数とは、採用に関わる業務に費やした実際の作業時間の合計です。工程で分けずに合計だけを測ると、どこに時間が偏っているかが見えません。

以下は、8段階と各段階に含まれる主なタスクです。

段階 名称 主なタスク
段階0 採用ブランディング・戦略設計 採用人数・要件・予算・期限の決定、EVP設計、ペルソナ定義、現場との要件すり合わせ
段階1 認知・興味 採用広報記事、SNS運用、採用ピッチ資料の作成
段階2 母集団形成 媒体運用、スカウト作成・送付、エージェントマネジメント、求人票の作成・更新
段階3 見極め(選考) 書類スクリーニング、面接、日程調整、評価の記録
段階4 アトラクト・グリップ カジュアル面談、説明会、候補者への情報提供、選考中のフォロー
段階5 オファー オファーレター作成、オファー面談、条件のすり合わせ
段階6 辞退阻止 内定後フォロー、接点の維持、入社日までの伴走
段階7 オンボーディング接続 入社準備、初期研修の設計、受け入れ部署との調整

IMG-03-2 採用ファネル8段階の分解

用語を定義します。スクリーニングとは、応募書類や経歴の情報をもとに、選考を進めるかどうかを判断する工程です。エージェントマネジメントとは、人材紹介会社に対して要件を共有し、推薦内容へのフィードバックを返し、連携の質を保つ一連の業務です。ダイレクトリクルーティングとは、企業が候補者に直接アプローチして採用する手法です。


各タスクの工数目安を置く

採用業務のうち、段階2(母集団形成)と段階3(見極め)に含まれる主要4タスクの工数目安は、合計で月100時間です。この数値は当社の提案における標準見積前提〈2026年時点〉であり、実績値ではありません。

以下は、主要4タスクの工数目安です。前提となる作業量を併記しています。

タスク 対応する段階 工数の目安 前提となる作業量
エージェント対応 段階2 母集団形成 40時間/月 5社対応
媒体運用 段階2 母集団形成 20時間/月
書類スクリーニング 段階3 見極め 20時間/月 80名確認
スカウト作成・送付 段階2 母集団形成 20時間/月 120通
合計 100時間/月

上記は参考値です。

この4タスクは段階2と段階3に対応するものです。段階0(採用ブランディング・戦略設計)、段階1(認知・興味)、段階4(アトラクト・グリップ)、段階5(オファー)、段階6(辞退阻止)、段階7(オンボーディング接続)の工数は、上記には含まれていません。4タスクの数値をこれらの段階に機械的に割り当てないでください。

IMG-02-1 採用業務の工数内訳イメージ(月あたり)

自社の月間工数を算出する(記入式テーブル)

自社の工数は、8段階ごとに時間を書き出して合計します。新卒と中途は選考フローも工数の配分も異なるため、テーブルを分けて記入してください。

以下は、記入式テーブルの全項目です。〈新卒〉版と〈中途〉版で同じ項目を使い、シートを分けます。

段階 タスク 時間/月 割り込み・待ち時間 合計
段階0 採用戦略・要件すり合わせ・ペルソナ定義 [ ]h [ ]h [ ]h
段階1 採用広報記事・SNS運用・ピッチ資料 [ ]h [ ]h [ ]h
段階2 媒体運用 [ ]h [ ]h [ ]h
段階2 スカウト作成・送付 [ ]h [ ]h [ ]h
段階2 エージェント対応 [ ]h [ ]h [ ]h
段階2 求人票の作成・更新 [ ]h [ ]h [ ]h
段階3 書類スクリーニング [ ]h [ ]h [ ]h
段階3 日程調整 [ ]h [ ]h [ ]h
段階3 面接・評価の記録 [ ]h [ ]h [ ]h
段階4 カジュアル面談・説明会・選考中のフォロー [ ]h [ ]h [ ]h
段階5 オファーレター作成・オファー面談 [ ]h [ ]h [ ]h
段階6 内定後フォロー・接点の維持 [ ]h [ ]h [ ]h
段階7 入社準備・受け入れ調整 [ ]h [ ]h [ ]h
合計 [ ]h [ ]h [ ]h

記入のルール:(1) 対象期間は直近1か月に固定します。(2) 複数名で分担している場合は、担当者ごとに1枚ずつ記入して合算します。(3) 「割り込み・待ち時間」の列は、現場からの問い合わせ・面接官の返答待ち・候補者からの急な連絡を計上します。


人件費に換算する

人件費換算とは、業務に費やした時間を、担当者の人件費単価で金額に置き換えることです。時給換算だけで示すと経営層には響きにくいため、「その時間で本来できたはずの業務」を併記します。

換算の手順は3ステップです。

  1. 担当者の時間あたり人件費を出す:年収に法定福利費などの間接費を加えた総人件費を、年間の所定労働時間で割ります。年収だけを労働時間で割ると、実際のコストより小さく出ます。参考として、採用担当・面接官の内部人件費は時給換算1,500〜3,000円が一つの目安とされています〈算定法の目安・2026年時点〉。
  2. 段階別の工数に単価を掛ける:段階ごとに金額を出します。合計だけでなく段階別に出すことが重要です。どこに費用が集中しているかが、配分変更の議論の出発点になります。
  3. 戦略業務に使えていない時間を併記する:段階0(採用ブランディング・戦略設計)と段階1(認知・興味)に使えている時間の割合を出します。この割合が低いことが、経営層にとっての論点になります。

⚠️ よくある勘違い

「人を増やせば解決する」と考えられがちですが、増やす前に測るべきことがあります。なぜなら、業務量を測らずに増員すると、増えた分だけ同じ構造の業務が分担されるだけで、戦略業務に使える時間が増えるとは限らないためです。加えて、増員の稟議には根拠となる数字が要ります。

ではどうするか。次の3点を先に測ってください。(1) 8段階別の工数、(2) 段階0・段階1に使えている時間の割合、(3) 割り込み・待ち時間の合計。(3)が大きい場合、増員よりも先に、依頼の受け口や日程調整の運用を変えることで削減できる余地があります。増員はそのあとの判断です。



「削る/型化する/自動化する/外に出す」で仕分ける

採用業務の4分類とは、測った工数を〈削る/型化する/自動化する/外に出す〉の4つに仕分ける判断軸です。4つは対等な選択肢であり、外に出すことが前提ではありません。

以下は、4分類の判断軸です。

分類 対象となる業務 判断の目安 着手の順序
型化する 毎回やり方が変わるが、本来は同じ手順で済む業務 担当者によって進め方が違う業務があるか 1番目
自動化する 型が決まっており、判断を伴わない業務 型化が済んでいるか(済んでいないものは自動化できない) 2番目
外に出す 型が決まっており、判断基準が言語化されている業務 判断基準を第三者に説明できるか 3番目
削る 目的が説明できない業務、成果に接続していない業務 その業務をやめた場合に誰が困るかを説明できるか 4番目

IMG-03-3 採用業務の4分類 ― 削る/型化する/自動化する/外に出す

「外に出す」かどうかの境界線

採用業務のうち、外に出しやすい業務と出しにくい業務の境界線は、「判断が要るか」ではなく「判断基準が言語化されているか」です。判断を伴う業務でも、基準が言語化されていれば委託できます。逆に、単純作業に見えても基準が担当者の頭の中にしかない場合、委託しても差し戻しが続きます。

確認するのは次の3点です。(1) その業務の判断を、書面で第三者に説明できるか。書類スクリーニングであれば、通す条件と落とす条件を文章で書けるかどうかです。(2) 例外が発生したときの扱いが決まっているか。基準に当てはまらないケースの扱いが決まっていないと、その都度の確認が発生します。(3) 判断の結果を振り返る場があるか。委託先の判断が要件と合っているかを定期的に確認する場がないと、ずれが蓄積します。

採用要件そのものが流動的なポジションでは、(1)の言語化を固定できません。その場合は業務全体ではなく、判断を伴わない部分(日程調整、候補者への定型連絡)だけを切り出す方が現実的です。

⚠️ よくある勘違い

「ツールを入れれば工数が減る」と考えられがちですが、減る業務と減らない業務があります。なぜなら、ツールが代替できるのは型が決まっており判断を伴わない作業であり、判断を伴う業務や、そもそも型が決まっていない業務は、ツールを入れても手順が変わるだけだからです。

ではどうするか。導入を検討する前に、対象業務が「型化する」を終えているかを確認してください。終えていない場合、先に型化します。型化の過程で、判断を伴う部分と伴わない部分が分かれ、ツールで代替できる範囲が特定できます。この順序を飛ばすと、導入後に運用が定着せず、従来の方法と併存する状態になりやすくなります。

外部に出すかどうかを判断する段階では、採用代行(RPO)・人材紹介・人材派遣・採用コンサルティングの4つの手段で、費用の発生の仕方も成果責任の所在も異なります。判断材料は採用代行(RPO)・人材紹介・人材派遣・採用コンサルの違いで扱っています。


まとめ

採用業務の忙しさは、人事業務の10ドメインのうち Recruiting を切り出し、採用ファネル8段階に分解して測ることで数字にできます。測った工数は〈削る/型化する/自動化する/外に出す〉の4分類で仕分け、着手は「型化する」から始めます。

この記事の結論は4点です。

  1. 測る範囲を Recruiting に絞ってください。他のドメインの工数を混ぜると、どこが許容量を超えているかが分からなくなります。
  2. 工数は8段階の単位で測ります。合計だけを測ると、時間の偏りが見えません。
  3. 最も抜けるのは、割り込み対応と調整の待ち時間です。1週間だけ実測してから月換算する方が、記憶で1か月分を埋めるより精度が上がります。
  4. 仕分けは「型化する」から始めます。「削る」から始めると、記録や振り返りなど成果への接続が見えにくい業務から削られ、後段で手戻りが増えます。

出典一覧

本記事は市場統計を使用していないため、外部出典はありません。

  • 本文中の工数の数値(エージェント対応40時間/月・媒体運用20時間/月・書類スクリーニング20時間/月・スカウト作成・送付20時間/月・合計100時間/月)は、いずれも当社の提案における標準見積前提〈2026年時点〉であり、実績値ではありません。「業界標準」「平均」「実際に受託している業務量」でもありません。
  • 人事業務の10ドメイン、採用ファネル8段階、採用業務の4分類は、当社のメソッドによる整理です。採用ファネル8段階は当社の方法論の正典に基づきます。
  • 累計支援社数300社は当社の内部実績値です〈2026年6月時点〉。第三者監査を経た公表値ではありません。

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