内定辞退を防ぐ|候補者体験(CX)とアトラクト設計の実務

内定は出せているのに承諾されない、数多くの企業で発生します この記事はそんな企業様や採用チームの皆様に向けた内容です。 この記事では、辞退理由の実データをもとに、志望度がどの時点で決まるのか、選考フィードバック・オファー面談・面接官トレーニングをどう設計するかを扱います。

コラム・ナレッジ

内定は出せているのに承諾されない、数多くの企業で発生します
この記事はそんな企業様や採用チームの皆様に向けた内容です。

この記事では、辞退理由の実データをもとに、志望度がどの時点で決まるのか、選考フィードバック・オファー面談・面接官トレーニングをどう設計するかを扱います。

本記事の辞退データは〈新卒〉を対象とした調査に基づきます。中途採用については、構造の共通性を定性的に述べるにとどめています。

辞退理由の実データ〈新卒〉:志望度49.8% vs 給与条件11.4%

企業が挙げた〈新卒・2026年卒〉の内定辞退理由で最も多いのは「より志望度の高い企業から内定が出た」で49.8%、給与条件は11.4%です(マイナビ「2026年卒 企業新卒内定状況調査」2025年11月7日公表・回答1,810社・複数回答)[1]。辞退の主因は条件面ではなく、志望度形成にあります。

まず用語を定義します。内定辞退とは、企業から採用の意思を伝えられた候補者が、入社しない意思を示すことです。内定承諾率とは、内定を出した候補者のうち、入社の意思を示した候補者の割合です。

以下は、企業が挙げた「学生の内定辞退理由として多かったもの」を、回答割合の高い順に整理したものです。設問は複数回答であり、合計は100%になりません。

内定辞退理由(選択肢の原文) 回答割合〈新卒・2026年卒〉
より志望度の高い企業から内定が出た 49.8%
希望職種 17.7%
希望勤務地 15.1%
希望業種 12.1%
給与条件 11.4%
(参考)保護者からの反対 1.9%

出典:マイナビ「2026年卒 企業新卒内定状況調査」(調査期間2025年9月5日〜10月3日、回答1,810社、2025年11月7日公表)をもとに当社作成[1]。複数回答。上表は上位5項目と参考1項目の抜粋です

IMG-02-1 〈新卒・2026年卒〉内定辞退の理由 (マイナビ)

内部リンク:この背景にある採用市場の構造は、採用ができない本当の理由(2026年市場データ)で扱っています。

⚠️ よくある勘違い

「辞退されるのは給与で負けているから」と考えられがちですが、〈新卒・2026年卒〉のデータでは給与条件は11.4%にとどまります。最も多い理由は「より志望度の高い企業から内定を得た」で49.8%です(マイナビ「2026年卒 企業新卒内定状況調査」2025年11月公表・n=1,810)[1]。給与水準の見直しは、辞退全体のうち限られた部分にしか作用しません。

ではどうするか。直近の辞退者について、辞退の理由を上記の5分類で集計してみてください。自社の分布が調査と同じとは限りません。分類した結果、志望度の割合が大きいなら、直す対象は選考プロセスの設計です。具体的には、志望度が決まる接点の特定(次章「志望度はいつ決まるのか」)、選考フィードバックの速度と粒度(「選考フィードバックの設計:速度と粒度」)、オファー面談の型(「オファーレターとオファー面談の型」)の3点です。


志望度をあげる候補者体験(CX)

志望度が決まるのは最終面接ではなく、多くの場合その2つ前の接点です。最終面接の時点では、候補者は既に自社の優先順位を暫定的に決めています。特に中小企業はですが、設計し直すべきは、一次面接から二次面接にかけての接点です。

候補者体験(CX)とは、候補者が企業と接触してから入社または辞退に至るまでに得る一連の経験です。アトラクトとは、接点を持った候補者に対して自社で働く価値を伝え、志望度を高める工程です。志望度形成とは、候補者が複数の選択肢の中で自社の優先順位を上げていく過程です。

以下は、選考の各接点で候補者側に何が起きているかを整理したものです。

接点 候補者側で起きていること 企業側が設計すべきこと
書類選考・初回連絡 対応の速度から、組織の姿勢を推測する 応募から初回連絡までの所要時間
一次面接 「この会社の人と働けそうか」の初期判断 面接官が渡す情報の量と型
一次→二次の間 他社と並べて優先順位を暫定的に決める この期間の接点の有無。ここが空白だと順位が下がりやすい
二次面接 業務の具体像を確認する 最初の1か月の業務・一緒に働く人の構成
二次→最終の間 他社と並べて優先順位を暫定的に決める この期間の接点の有無。ここが空白だと順位が下がりやすい
最終面接 既に決まっている優先順位の確認 意思決定を妨げている点の解消
最終→オファーの間 他社と並べて優先順位を暫定的に決める この期間の接点の有無。ここが空白だと順位が下がりやすい
オファー面談 最終確認と条件のすり合わせ 入社後3か月の解像度の提示

それぞれのファネルでの体験ももちろん大事ですが、一次面接と2次面接の間など空白の時間も体験に大きく関与します。

日程調整をいかに早くできるか、メッセージをどれだけ丁寧にできるか、来てほしいとどれだけ伝えられるか、こういったところが候補者の体験には大きく関係してきます。

IMG-03-1 志望度はどの接点で決まるのか


選考フィードバックの設計:速度と粒度

選考フィードバックは、速度と粒度の2軸で設計します。速度は全候補者に対して一律に速くし、粒度は合否と選考段階に応じて変えます。不合格連絡の質は、その後の合格者の承諾率にも作用します。

以下は、速度と粒度の組み合わせを整理したものです。

合格連絡 不合格連絡
速度 面接当日〜翌営業日 翌営業日もしくは2~3日後
粒度(一次・二次) 次の選考の日程候補と、次に会う人の役割を添える 定型文で可。ただし「ご縁がなく」で終わらせず、応募への謝意を明記する
粒度(最終) オファー面談の日程と、当日話す内容の予告を添える 評価した点を1点だけ具体的に添える。不合格理由の詳細な説明は行わない

不合格連絡に評価した点を添える理由は、候補者が他の求職者に自社の選考体験を共有するためです。選考体験の評判は、後続の応募や紹介の経路に影響します。ただし、不合格理由を詳細に説明すると、判断の妥当性をめぐるやり取りに発展することがあります。添えるのは評価した点だけにとどめてください。

IMG-03-2 選考フィードバックの設計 ― 速度 × 粒度


効果の高いアトラクトの種類とやり方

アトラクトに関しては、3つの方法で実施を行います。1つ目にヘルプ、2つ目にビジョン、3つ目にメリット。それぞれの候補者によって効果的な手法が変わってきますので、やり方と実例を見ていきましょう。

以下は、アトラクト方法のイメージを整理したものです。

ヘルプ 助けてほしい。事業の状況や今後の方針を考えるとあなたの力がどうしても必要である
ビジョン 我々にはこんなミッションやビジョンがあり、これを達成することに強く情熱を注いでいる。
メリット この会社にはこんな報酬制度や福利厚生、また成長環境があり、あなたがここに入ることによってこんなキャリアを描くことができる。

カジュアル面接や一次面接、二次面接、最終面接等で、その人の人となりを確認しながら、どういうアトラクトが最も効果的なのかを把握して、採用を進めていくことが重要です
また、もし導入できるのであれば、「ミキワメ」サービス等も導入しながら、その人の性質というのを定量的に把握した上で、効果的なアトラクトを実施するというのも良いと思います。


オファーレターとオファー面談の型

オファー面談で最も重要なのは条件説明ではなく、入社後3か月に何をするかの解像度です。条件は書面で伝えられますが、入社後の具体像は対話でしか伝わりません。

オファーレターとは、内定の内容(ポジション、条件、入社日など)を踏まえて、いかにあなたに来てほしいのかということを、より情熱的に候補者に示していくための文章です。
オファー面談とは、内定を伝えたあとに、候補者の意思決定を支援するために行う面談です。

特にここでは、事業責任者であったり経営者が熱意を持って「いかに来てほしいのか」ということを伝えていくことが重要です。

候補者には、各社の条件が出揃い、定量的な比較をした上でも、最後に迷っているという局面が存在し、オファーレターの情緒的なアプローチというのが、最後の一押しになる可能性は高いと考えられます。

以下は、オファー面談のアジェンダ構成の一例です

# アジェンダ 時間の目安 目的
1 内定に至った理由を、選考中の具体的な場面を挙げて伝える 5分 候補者が自分の何が評価されたかを理解する
2 入社後3か月に担当する業務を、1つに絞って説明する 10分 入社後の解像度を上げる
3 一緒に働くメンバーの構成を、役割で説明する 5分 働く環境を具体化する
4 内定通知書 兼 労働条件通知書等の内容を読み合わせる 10分 条件の認識を揃える
5 現時点で意思決定を妨げている点を聞く 15分 懸念を言語化してもらう
6 次のアクションと、回答をもらう時期の相談 5分 候補者の検討スケジュールに合わせる

アジェンダ5が最も重要です。ここで候補者が挙げた懸念に対して、その場で回答できない場合は、いつまでに回答するかを約束してください。約束した期限を守ることが、そのまま入社後の信頼の前提になります。

アジェンダ6では、回答期限をこちらから一方的に指定しません。候補者の他社選考の状況を聞いたうえで、双方が納得できる時期を相談します。

IMG-03-3 オファー面談の型 ― アジェンダ構成


面接官トレーニングの最小構成

面接官ごとの評価のブレをなくすとき、評価基準を増やすのではなく「評価しない項目」を決めるほうが早く揃います。基準を足すと、面接官ごとに重み付けが分かれ、かえってばらつきます。

面接官トレーニングを制度として始める場合、最小構成は次の3点です。

  1. 評価しない項目を決める:出身校、第一印象の良し悪し、面接での話し方の巧拙など、要件と直接関係しない項目を明示的に「評価しない」と定めます。基準を増やすより、除外を決めるほうが合意が早く、運用も揃います。
  2. 必ず伝える3点を決める:最初の1か月の業務、一緒に働くメンバーの構成、3か月後に期待される状態です。面接官が渡す情報量の差が、そのまま志望度形成の差になります。
  3. 面接後15分で評価を記録する運用にする:時間が空くほど、記憶が印象に置き換わります。記録の粒度は、要件ごとに「確認できた事実」を書く形式にしてください。

候補者アンケートの回収設計

候補者アンケートは、選考終了後にまとめて取ると本音が出ません。各選考の当日中に、合否に関与しない担当者が、3問だけ聞く設計にします。

以下は、回収設計の3要素です。

要素 設計 理由
いつ 各面接の当日中 翌日以降になると、候補者の記憶が「結果への期待」に置き換わる
誰が 面接官ではなく、合否に関与しない担当者 面接官が聞くと、評価者に対する回答になる
何を 3問だけ:(a) 今日いちばん知れてよかったことは何か (b) まだ分からないことは何か (c) 現時点で他に検討している選択肢はあるか (b)が次の面接の申し送り事項になり、(c)が意思決定の時期の目安になる

回収した内容の使い方:(b)「まだ分からないこと」を次の面接の冒頭で解消すると、接点1回あたりの情報量が上がります。(c)「他に検討している選択肢」は、候補者を追い詰める材料ではなく、こちらの選考スケジュールを候補者の検討時期に合わせるための情報として使ってください。


「追い詰めない」クロージングの原則

クロージングで行うのは、意思決定の支援であって、意思決定の強制ではありません。他社の選考を止めさせる、回答期限で圧力をかけるといった手法は用いません。

TOKUMORIでは、候補者を心理的に追い込むクロージング手法を扱いません。理由は2つあります。1つは、圧力によって得た承諾は、入社後の早期離職や、入社日前の想定外辞退につながりやすいため。もう1つは、そうした手法を用いた選考体験が、口コミの経路を通じて後続の応募に影響するからです。

以下は、行うことと行わないことの整理です。

行うこと 行わないこと
意思決定を妨げている点を聞き、事実で回答する 他社の選考を止めるよう求める
候補者の検討スケジュールを聞き、それに合わせて回答時期を相談する 回答期限を一方的に指定し、期限超過で内定を取り消すと伝える
入社後の具体像を提示し、判断材料を増やす 他社を引き合いに出して比較を促す
迷いの内容に応じて、追加で会う人を提案する 承諾を前提とした手続きを先に進める

候補者が辞退を選んだ場合、その理由を分類して記録してください。理由の分布が、次の設計対象を示します。辞退そのものをなくすことはできません。〈新卒・2026年卒〉では、内々定辞退率が3割以上の企業が59.4%を占めています[1]。


まとめ

〈新卒・2026年卒〉の内定辞退理由の第1位は志望度(49.8%)であり、給与条件(11.4%)は下位です[1]。辞退の主因は条件面ではなく志望度形成にあり、選考プロセスの設計で改善できる範囲があります。

この記事の結論は4点です。

  1. 辞退理由の約半数は志望度です。〈新卒・2026年卒〉で「より志望度の高い企業から内定を得た」が49.8%、給与条件は11.4%です(マイナビ「2026年卒 企業新卒内定状況調査」2025年11月公表・n=1,810)[1]。この数値は新卒のものであり、中途に一般化できません。
  2. 志望度が決まるのは最終面接ではなく、一次面接から二次面接の間です。この期間に接点がない状態が、最も多いパターンです。
  3. オファー面談で最も効くのは、入社後3か月の解像度です。条件はオファーレターで伝わっており、面談では新しい情報を渡してください。
  4. 面接官の評価のブレは、基準を増やすより「評価しない項目」を決めるほうが早く揃います。

出典一覧

[1] 株式会社マイナビ キャリアリサーチLab「マイナビ2026年卒企業新卒内定状況調査」2025年11月7日公表 調査期間:2025年9月5日〜2025年10月3日/回答数:1,810社/調査対象:新卒採用実績のある企業の採用担当者 集計方法:ウエイトバック集計(業種別構成比を経済センサスの比率に合わせて重み付け) 掲載ページ:https://career-research.mynavi.jp/reserch/20251107_104128/ 調査報告書(PDF):https://career-research.mynavi.jp/wp-content/uploads/2025/11/2026-kigyo-naiteijyokyo.pdf ※本文での参照箇所と、設問ごとの回答数 ・内定辞退理由として多かったもの(複数回答):より志望度の高い企業から内定が出た49.8%/希望職種17.7%/希望勤務地15.1%/希望業種12.1%/給与条件11.4%/保護者からの反対1.9%(p6・図10) ・現時点での内々定辞退率が3割以上:59.4%(p56・回答1,154社) ※対象市場:〈新卒・2026年卒〉。調査対象は企業であり、学生本人ではありません。中途採用に一般化することはできません

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